20:13
気づいたら泣いていた。
仕事の合間に、あまりものの白菜を卵でとじて簡単に夕飯にした。間髪入れずに仕事に戻ろうか。いや、明日明後日は終日の外出。がんばって立ち上がり、お皿を洗う。録画したスイッチインタビューが流れている。
今日は、クリスマスイブだ。
手元のお皿とスイッチインタビュー。意識をそちらに戻す。穏やかさと安定がまだここにあるはずだ。明日の準備もあるし、早く仕事に取り掛からないと。
お皿を洗い終わって、ミルクティを作って、テーブルも拭いて。
ふとiPhoneを目をやる。前職の上司からの着信履歴が通知にあった。
一階の電気を消す。
気づいたら泣いていた。
まるで我慢していたかのように、そんなことないのに、涙はぽろぽろとこぼれ落ちた。全然そんな感じじゃなかったのに。
面白いひとが来るからと池神さんが誘ってくれたランチ。蓋を開ければ総勢10名となった大ランチ会に面食らった。事あるごとに声をかけてくれる池神さんに心底有り難く感じながらも、人疲れと下降気味の気持ちに、マライア・キャリーのクリスマスソングが聞こえてきて、急いで席を立ち失礼した。
家に帰って、Josh とリモートでつなぎながら仕事をした。
朝はアシスタント候補の人の面談もあったし、紀亜から素敵なクリスマスソングも届いた。青とのやり取りもあった。
寂しい1日じゃ、全然なかったんだ。
なのに。
上司からの着信通知が、保ってきたものを崩したのは確かだ。
「どうしてるかなと思って電話してみました」
留守電には、彼女の別荘へのお誘いとともにそう残されていた。
私はいま、なんでこんなに泣いてるんだろう。
そんなに寂しかったわけでもないと、思っていたのに。
ずいぶんと安定していると、思っていたのに。
25:20
あと1週間で、2018年が終わる。
2018年のしっぽを掴めたらいいのに。
待って、お願いだから、私を待って。行かないで。奏くんのいた日々を閉じ込めたまま遠くに行かないで。ここにいて。
奏くんのいた箱のような列車のような入れ物はその扉を閉め、去って行ってしまう。
いや、去って行っているのは、私たちのほうなのかもしれない。その列車のような入れ物は、進むことを止めない。生きていたものたちをここに置いたままで。
お願いだから、待って。
そのしっぽを、掴めたらいいのに。