3ヶ月目

2018/11/30 左薬指から右薬指へ

20:28

また「1日」が来る。

4度目のその日。オフィシャルな命日は2日だけど、そのことが実際に起こったのは1日だから、どうしても「1日」に最もエモーショナルになってしまう。

集中して仕事して、一区切り。トイレに行こうと、部屋の外へ出る。11月の最終日、暖房無しでは家の中でも寒い。そんな瞬間に、またそれは襲ってくる。

もういないんだ

暗くて寒くて重たくて、目をぎゅっとつむりたくなる。息をゆっくり目に吐いて、何度かまばたきをしてから、目を閉じる。ふうっと息をまた吐いて、「それ」も体外に出してみる。事実はなんにもかわらないのだけれど。

指輪のはめられた右手薬指がきゅうくつだ。

仕事中にふとなんとなく、左手薬指にあった指輪を外してみた。

「いつこのアクションが取れるのかな」「少し大きな儀式のひとつだな」なんて思ってきたのに、こんなにもあっさりと、指輪は、左手薬指からすっと抜けた。6年分の白いラインが、ぼんやりとそこに残っていた。

同じ薬指でも、左手と利き手の右手とでは太さが違うようだ。あんなにすっと左薬指から抜けた指輪は、右薬指にはもう全然入らない。正直無理かと思った。夜だから浮腫んでるからなの?なんとか入りはしたけれど、…外れるかが不安になってきた。指もずいぶんと苦しそうだ。

トイレから戻り、デスクにつく。呼吸に意識を向けて、何度か深呼吸をする。こうやって、これまでも、この引きずり込まれそうな感情と付き合ってきたんだ。今日だって、今だって。

深呼吸の最中にiPhone通知。真子ちゃんからお墓参りの件だ。間髪入れずに、CalvinとJoshと、Slackでの会話がはじまる。

ひとりじゃない。

ひとりだけど、ひとりじゃない。

あぁわかった。これが「記念日なんとか」ってやつだ。苦しい。泣きたい。辛い。苦しい。

茉奈にLineしてみる。仕事中かな…。

明日の「1日」は、誘われた焚き火シネマに行く、という選択肢だって有り難いことにあるのだ。でも、行くエネルギーがないし、どんなシネマか、激しく不安だ…。

悲しくて、苦しくて、あの日を思い出しちゃって、泣けてくる。

自分を責めることがなくなってしばらく経つ。あの病院の近くを通っても、看板を見ても、なんとか平静でいられるようになった。それでも「1日」が近づけば、それが首をもたげようとする瞬間があるのに気がつく。

泣いちゃうのも、悲しいからしょうがない。しょうがない。でも、悲しい。

I miss you so much, so bad, …

最近、こんなに泣いてなかったのにな。

いや、野尻湖でさんざん泣いたわ。紀亜にもらったポケットティッシュを手にして思い出した。

ごはんを作ろう。ゆっくりで良いから、ごはん作りながら、飲みながら、ごはんにしよう。こんなに涙に溺れてたってしかたない。おなかすいてるからかもしれないし。

茉奈が仕事終わって家にいたらいいのに。Lineしながらごはん付き合ってもらえたらいいのに。いつまでこんな感じなのかは分からないけれど、まだまだ、こんな感じだ。しょうがない。

夢ならいいのに。長い、長い、長い夢ならいいのに。目が覚めて、8月1日の朝に戻って、…

いや、せめて、あの病院にいた日々に、私を戻して。

会いに行ければ、それでいいから。

意識がなくとも、それでもいいから。

そこにいてくれさえすれば、それでいいから。

ただただ恋しいよ、会いたいよ、そこにいてほしい、会える場所がそこにあってほしい。どこに行ったら、どうしたらいいのか、私はどこに向かえばいいのか、わかんないじゃん。

なんでそんなに、生き急いでしまったの?

動画は、見れない、声を聞くのがこわい。

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