20:28
みんなみんな、誰かをうしなって
みんなみんな、それを抱えて
それでも、優しさをその笑顔に携えて
今日も生きている
それを強さとも言うのだろう
21:20
ブリーチした頭皮の数カ所で、髪が固まっている。…なんか液体が出てるんだな…。頭皮が液体出してまでやるのは、この一回きりで良い。
ただ、ただただ、そうしたかったんだ。今回だけは。
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外房の夜は、とても静かだ。
何も点けずにじっとしていると、冷蔵庫や電化製品の出す音が低く静かに聞こえるくらいで、他の音はしない。
しばらくじっとして、静けさに耳を澄ます。
遠くに、車が走る音が聞こえる。遠くに。
ここの夜は、静かで、暗くて、怖い。
それが、外房の夜の第一印象だった。
あれはいつのことだろう。
千葉・外房は、未知だった。奏くんの運転する車で、夜の道を御宿に向かう。京葉道路幕張PAで休憩をして、どこかしらで早々と高速を下り、下道を走る。
車窓を流れる視界の半分は暗闇だった。真っ暗な田んぼが広がる向こうに浮かぶ月。そこにあるのはただそれだけで、その暗い夜が怖かった。
「こんなに夜が暗いなんて、ここで暮らすとか、怖いね」
確か、そんなことを奏くんに言った。
それから何年も経って、ここに暮らすようになってからも、夜の印象は変わっていない。静かで、暗くて、怖い。だから、夜は外に出ない。
眠っていたスナフィが起きてきて、伸びをしながら歩き、ぴちゃぴちゃとお水を飲む。
ひとりだけど、ひとりじゃない。
スナフィがいて良かった。
暗くて静かな夜に、心底そう思った。