22:41
奏くん。今日は良い1日だったよ。ね。
クライアント先からの帰り道。港南口の、モニターたちに見られてるようなあの道を、仕事内容を評価してもらった喜びを噛み締めながら歩いていた。
奏くん。いつもなら、帰って奏くんに真っ先に報告してたよね。こう言ってもらってねとか、嬉々として。あなたに褒めてもらったり、誇らしく思ってもらったり、すごいって言ってもらったり。一緒に喜んでくれることが嬉しくて、いつもなら、跳ねる心とともに帰り道を急いでいたよ。
でももう、家に帰っても、そんなこと、望めない。跳ねた心は、着地ができず沈んでいきそうだ。
人波を一緒に歩く、隣の Josh に、その温かさに、視線と意識と気持ちとを移す。
硬くなった体が、ふっと緩んだ。息ができる。
人知れず、また溺れそうになっていたよ。
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こうして、「あの明るいほうへ」を繰り返しながら、私は今日も、生きている。