19:54
打ち合わせが終わり、東京駅から出るバスで家路につく。
バスでの家路は辛さを纏う。
「零、手をつなごう」
あの日の青の言葉に、あの日が今と混じり合う。
青の小さな手。その温もり。車窓を流れる夜景のその先を、眺めるともなく眺めていた。次から次に涙が流れ、その流れるにまかせていた。駅に到着するまでの一時間。ふたりの間には、ひとつの言葉もなかった。
いつか、この内臓を鷲掴みにされるような苦しみが痛みが、薄れる時が来るのだろうか。
もうこんなに泣きたくないんだ。
どんなに泣き崩れたって、どんなに後悔したって、どんなに落ち込んだって、現実はなにも変わらない。
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良き理解者、いや、最高の理解者を失った。
…でも。
失っていないかもしれない。
自分が心から愛し尊敬し信じている奏くん。その人が、私を理解してくれ、尊敬してくれ、大事にしてくれ、そして愛してくれた。その事実は、今なお失われてはいない。
今の私は、あの頃よりも強くしなやかに、人として気持ちの良い状態へと変わってきている。
私自身が、自分の良き理解者になれるはずだ。
自らが一番の理解者となり、その上で、他にも良い理解者を得られればなんと幸せなことだろう。
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愛すれば愛するほど、いつかくる別れが怖い。想像しただけですでに怖い。
でも、そういうものなのだから。
それを知った上で愛することと、それなしで愛することは、きっと全く違うのだろう。