8:39
毎朝、奏くんに手を合わせ、目を閉じて、祈る。
毎朝、「うそでしょ」と思う。いまもなお。
あまりに受け入れがたい現実を、自分に染みこませていく儀式。
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「生きる意味」なんて幻想で、自分が作り出しているだけなんだ。
22:02
代行問題。
そもそもこちらの交通事情は都内や都会とは異なる。いつも利用する最寄りの駅までは、ほぼ車一択なのだ。車であれば約15分のところ、徒歩だと1時間15分だし、バスは30分だけど1日に5本しかない。
これまで、会食だったり打ち上げだったり、外で飲む機会はそれなりに楽しんできた。出先で楽しむ美味しいものと美味しいお酒は、間違いなく楽しみのひとつだ。飲んできたとて、いつだって奏くんが迎えに来てくれていた。でも今は違う。飲んだら最後、運転できない。タクシーはあれど、翌日以降に車を取りに行く必要が生じて面倒この上ない。
こうなってみて初めて、運転代行サービス、というものがあることを知った。二人二台で来てくれて、ひとりが代わって運転席に座り、目的地まで車を運転してくれるのだ。
新しもの好きという性質も手伝って、始めの頃は嬉々として利用してみていた。しかし、ベストな選択肢ではないことに気がつくのにそう時間はかからなかった。一回2,000円ほどの料金がかかるのは当然だが、平均して30分は車内で待たなくてはならない。金曜夜や繁忙期はもっと待つことも。その上、家を知られる。何度か利用すれば同じ運転手にあたる。親切そうな申し出ではあったけれども、「番号も家も知ってますから」と言われた時には身体が固まり時が止まった。二人きりの、家へ向かう車内。愛想笑いは崩さずに。