20:12
東京駅八重洲口。
改札を抜けた紀亜が、人混みに見えなくなる。
側にいてくれて、本当に本当にありがとう。
紀亜が新幹線のチケットを買うあたりから感じ始めた、心のざわつき。寂しい、孤独、不安。ひとり駐車場へ向かう。ざわつく波が、すぐそこにまで迫って来ているのを、感じている。
車のドアを開ける。待っていてくれたスナフィを抱きしめる。温かい。ざわざわは大きくなって、もう喉元まで上がってきそうだ。
まずは高速に乗ろう。隆に電話しようかな、でも夕飯時だし、首都高抜けるまでは集中したほうが良いし…。Audiobookかな。
結局隆には電話せず、首都高に乗る。
しばらくして、やっぱりそれは襲ってきた。
奏くん、奏くん、奏くん…。
孤独感と、寂しさと、恋しさとに襲われて、涙が溢れる。
運転しなきゃ。集中しなきゃ。
波は次から次に襲ってきて、声を出して泣く。夜の京葉道路、流れる夜景。
なんでいっちゃったんだよ、なんだよこれ。
腹も立ってきて、ハンドルを叩いて、声を上げて泣いた。
.
家に無事辿り着いた。スナフィも一緒だ。
キッチンが綺麗になっていて、自分で救われる。ありがとう、綺麗にすることにした私。
「ここで暮らしていたくない」と、粘着度が高く強い感情が、心の奥底から湧き上がってくるのを初めて感じた一昨日のこと。
数日経った、今はどうだろう。
正直、わからない。
感情も、心も、気持ちも、思考も、スタンスも、刻一刻と、ずいぶんと変化してしまう。
「振り回されている」とは思わないまでも、その振り子にはのっかっている、とは思う。
21:42
昨日の不思議な体験を茉奈にLineで話した。
「奏さんにとっても、哀しくて、伝えられないもどかしさ、寂しさや怒り。会いたい気持ちでいっぱいなんだろうね。」と、返ってきた。
奏くんも、会いたいって思ってくれてるの?
そんなこと、初めて考えたよ。相変わらずで、本当にごめんね。すごい涙が出てきちゃう。奏くんは世俗的なところからすでに自由になっていて、会いたいとか、そういう苦しみが無いと良いと思う。こんなの、肉体や世俗的なしがらみのある私だけで十分だよ。
夢でいいから会いたいよ。
奏くんと新しい関係を築いていかないと、と、思っているけど、簡単じゃあ無い。
大好きだったあの笑顔が見たい。大好きだったあの体に触れたい。包まれたい。大好きだったその目で、私を見てほしい。大好きだったあの声を聞きたい。また私を笑わせてよ。一緒に笑おうよ。
全く鬱っぽくならないなんて、無理な話。
夢でいいから、お願い、会わせて。余計辛くなるかもしれない、でも、それでも良い。夢でいいから、とにかく会いたい。お願い。
.
また新しい気持ちが生じている。
生きていて、なにになるんだろう
言葉にすれば、そういう感じだろうか。
鬱っぽくなっている、のかもしれない。