18:13
1日の夕方、弟の隆から電話があった。そのまま車に乗って1時間、彼の家まで迎えに行った。
彼は、会社を辞めるという大きな決断をしていた。「それでとても楽になった」と、車窓を流れる夜景を背に隆が言った。
この人しかいない、そう感じていた彼女とも別れ、同棲を解消して一人の新居に移った。
「だけど。そのことよりも、『自分がどう生きるのか』。大きな不安として横たわっていて、その上に何も立たないんだ。」
人生の岐路に立つ姉と弟とで、いつもの湖の周りをスナフィと歩いたり、美味しいランプ肉を買って真剣に焼いて食べたりした。戸惑い、揺れる、心のままで。
20:22
隆が帰って、ひとり。訪れるあの時間。
ワインを開けて、彼を想い泣く。会いたい、苦しい、会いたい、会いたい。
飲みたいのは、泣けるからかもしれない。泣きたい、もどこかにある。
結局、誰かの前ではわんわん泣けないのだ。いや、そういう展開にならない、というのが正しい。
だから、ひとりになれば泣く。わんわん泣く。ワインを開けて。
誰彼思い浮かべ、電話して聞いてもらう想像。でも、誰かへと向かう悲しみはいつも調理済みの一口サイズ。悲しみのままに吐露することは無い。
悲しみは受け入れる対象ではなく、共にするものだ。
悲しみと共に生きる。それ以外にない。