9:49
目覚めれば、新しい現実と、ハマらない自分。外と内の間にある、激しい違和感。
とは言え、彼のいない暮らしには慣れた気がする。5ヶ月分の積み重ね。それでも違和感は残る。理解しようと言葉にしてみても、未だ薄まることはない。薄まらないままに、新しい現実もハマらない自分も、少しずつその形を変えていく。
Thank god, it’s winter. 冬で良かった。植物は成長を止め、虫もいない。生命力をあまり感じない静かなこの季節に、心の季節が重なっている。そのことに、どれほど救われているだろう。
あと2ヶ月もすれば、春分が近づく。果たして、春を迎える準備が出来ているのだろうか。想像も出来ない。
20:00
仕事に集中しているはずなのに、ふっと奏くんとその死が心に浮かんでしまう。
何が浮かぶかなんてコントロール外。あの日やその日、最期の瞬間や、ICUでの土気色の顔、電話越しのジョシュの悲痛な「I’m so sorry…」だったりする。いろんな断片が形を変えて、思考の隙間にすっと割り込む。途端に苦しくなって、つい顔が歪む。鏡の中、左眉毛の内上に、定着しそうなシワを見つけてハッとする。いけないいけない。鍼を打たれて走ったそのひどい痛みを思い出す。「ここに緊張が溜まってますね」。先生の声がする。いけない。
瞑想でもしようかな。深呼吸して、瞑想を。
その最期が苦しいものだったら…。そんなことを思い始めてしまい、本当に辛くて苦しくて、心身が引き裂かれそうになる。
死によって肉体から解放された魂は、苦しくなんかなかった。
そう思いたい。そう信じたい。
そう思わないと、苦しくて、耐えられない。