病院での1ヶ月

急性期を脱する

10:06

10時を過ぎても家にいる。

いつもならば、午前の面会時間に合わせて家を出ている時間。

今家を出れば、午前の面会に間に合うのに。奏くんに会えるのに。いいの?と、自分が自分を焦らせる。

でも、今日は夕方のみすることにしたんだ。

ここ最近、奏くんの意識が戻ってからは午前午後の面会を続けていたから、久々の家でゆっくりできる時間。今日は、少し休んで、洗濯をして、スナフィと一緒にいる時間を持つんだ。

「COLOR」を読む。フラミンゴの体がピンクなのは、好んで食べるエビの色素で体が染まる(と言う表現が合ってるのか?)んだって!びっくり。

17:00

今日は午後のみなのでスナフィを連れて病院に向かう。道中、散歩をしようと、公津の杜公園に寄る。

駐車場に車を停める。とほぼ同時に、体から力が抜けたようになった。機能停止。疲れが溜まっているのかな。お昼頃から頭痛もじんわり続いている。ダメだ。15分くらい仮眠を取ってみようかな。

17:22

デイルームで面会時間を待つ。

スナフィは車内で待っている。スナフィと一緒に病院に来れると、本当に気が楽だ。

奏くんがしゃべれるようになって、初めてひとりで会うんだ。そう思うとドキドキしてきた。聞き取れないばかりだったらどうしよう。いや、でも、明るく、笑顔でいこう。回復してきた今の状態が何より嬉しい。一緒に頑張っていこう。奏くんの元気につながるといいな。

午後の面会

ICUの入り口から真正面に、奏くんのベッドはあった。ICUに入った日からずっと。それが今日、移動して右奥に変わっていた。

人工透析を外してみている、とのこと(5日くらいに透析始めてからずっと付いていたということ…?)。酸素は94。でも、苦しそうな様子はない。痰がまだなかなか出せないみたいで、看護師さんがたまに機械で吸い出してくれる。

足や手を上げてもらうリハビリも始まったとのことだし、今も上体を起こしている。

奏くんに、「なにがあったの?」と聞かれて、どきっとする。

「今のこの状態?」と聞くと、「うん」と首を縦に振る。「心臓の(大動脈の)手術をしたんだよ」と答えると、目を見開いて、「なんで?」と聞く。「背中が痛くなってね、」というところまで説明したら、もうあちらを向いて、なにかに興味を奪われている。この話題には、もう興味がなくなったようだ。

「(意識が)覚めている」とはまだまだ言い難い。けれども、「たまに顔つきが変わる」と、看護師さんも言っていた。

今日もまた、おしりふきの追加購入を頼まれた。クリーナー、パウダー、おしりふき、そしてまたおしり拭き、からのおしり拭き。3日連続。ずっと下しているようで、看護師さんから「牛乳ダメですか?先生が聞いといて、と」。牛乳良く飲んでたけど、お腹が弱いのはまさかそれが原因だったのか…!?と、それをそのまま伝えた。

熱がまた、38度3分に上がっていた。

18:30

面会が終わっての帰り道。

助手席ではスナフィがずっと眠っている。たまに思い出したように起きて、窓を開けてもらって外を楽しんでいる。

2人で支えあっている事を実感する毎日。スナフィは私を支えているし、私もスナフィを支えている。

19:38

今日の帰路はまた、泣きながら帰ってきた。

奏くん:「お腹すいたね」「どこか行く?」「夢庵行く?」
私:「夢庵?」
奏くん:「うんうん」

このやり取りが帰り道で何度も思い出されて、ハンドルを握りながらその度に泣いた。

その会話の日常感と、この事態とのギャップが、もうたまらなくて。

この道を、どれだけ泣いて帰っただろう。

その日々はまだ終わらない。

23:01

眠れない。

目を閉じると、面会での奏くんの様子がぐるぐる回る。

…ずいぶん顔がシュッとしてたな。

この自分のなかのもやもやを、どうしたら溜め込まずにいれるだろう。

あ、でも今寝れそうだったかも。

寝たい。眠りたい。
早く朝が、早く明日が来て欲しい。

奏くんも眠れますように。

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