10:06
奏くんの夢をみた。
隣を奏くんが歩いていて、思わず抱きつく。感覚を総動員して、その身体を真剣に味わう。手のひらや、指や、顔や、細胞の全てを総動員して。あぁ、紛れもない彼の身体だ。「どういうことかな?たまに帰って来れるの?」なんて考え始める。
目が覚めてしまい、盛大に声を上げて泣いた。身体が震えるほどに泣いた。
彼の大きなハト胸の感覚は、まだこの手に残っている。目を閉じて、もう一度、もう一度、味わう。
前もそうだった。夢のなかの彼はじっとそこで、私を受け止める。私がすべてをかけて彼の身体を味わおうとするのを、じっと。
夢に出てきてくれて、想いに応えてくれて、ありがとう。
25:45
不思議なことがあった。
19時に作業が終わり、そのまま別プロジェクトの見積もり作りに夢中になっている最中のこと。
突然、大きな音が鳴った。
ビクッとして、辺りを見回す。すでにもう音は無い。スピーカーに目をやる。違う、最後に使ったのはもう数ヶ月も前で、電源も入ってないし繋がってもいない。どこから鳴ったのか分からない。「寝室?」部屋を出ると、ちょうど階段前で同じように音が鳴った。階下からだ。え…?何事…?見回っても、階下にあるどのスピーカーからも音が出た形跡が無い。
時刻が目に入り、はっと気がつく。
「!、あ…!時間…!」
今夜から、義父母宅に泊まりに行く予定だった。「仕事を終えて出ます」そう伝えてあったが、すでに20時近い。義父母宅までは車で1時間半。即座に義父母に平謝りで連絡を入れ、デスクに戻ってエンジンをかけ直す。
あ。音はたぶん、奏くんだ。
「早く行かないと」と、怒られたような気がした。