19:59
突如「ぼんっ」と頭に浮かんだのは、肉厚のジューシーなハンバーグだった。
溢れる肉汁。ソースは何かな。あぁもうそれ以外考えられない。…しかし、往復45分のお肉屋さんは予定的に厳しい。残る選択肢は、セブンイレブンかローソン。セブンイレブン、…「金のハンバーグ」…!
「金のハンバーグ」の噂は聞いていた(もちろん奏くんから)。よし、初金ハンバーグをしよう。売り切れだったら立ち直れないと、仕事の合間に買いに行く。
お肉をほとんど取らない平日に代わって、金曜や週末にはお肉を食べたくなる。ここ2日、作業はずいぶんと進んだし、今夜はハンバーグだ。
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家族の食卓。当たり前の日常。
二度と戻らない当たり前だった日常を、苦しいほどに恋しく思う。
当たり前を重ねた分だけ、喪失感は重たい。どーん、と、それは覆われるような、のしかかるような、侵食されるような、穴があくような。言葉にはできない。当たり前だった日常を喪うことは、こんなにも、重たくて苦しい。
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でも。However.
私は今から、ひとりだけれど、念願のハンバーグを食べるのだ。
今週も良く働き良い仕事をした。素敵な人達との素敵なことがたくさんあった。つまりは、今週も良く生きた。だから、昨日作ったグリル野菜にサラダも用意して、ゴールデンハンバーグをワインと共に楽しむのだ。
私の体を通して奏くんもハンバーグを味わえるかもしれないし、やっと感想を伝えられる。
金曜夜のハンバーグタイム。
23:18
飲んだら泣く。
誰よりも愛してくれる人を失ったこの感じ。どうにも言葉にできない。
写真も、時が止まったあの部屋も、この家も、目の前から消えてなくなれば良い。
言葉なんてない。ただ声を上げて泣くだけ。
Not a “home” anymore. あなたを喪い house になってしまったこの家で、あの日あの時の後悔に息を詰まらせている。
なぜ、あの時、「もう大丈夫だ」なんて思ってしまったんだろう。なぜ、仕事も少しずつ入れ始めて病院に行かない日を作ってしまったんだろう。
1ヶ月という時間を神さまに与えてもらっていたのに。