18:31
夕ご飯を作る。ネギとにんじんを入れた甘茶うどんを卵でとじる。
朝はシェルロールをひとつ食べた。途中に、きなこのパンとカロリーメイトを挟んでの夕ご飯。栄養が偏りそう。キムチで味変するか。
だめだ。泣かない。泣かない。
18:56
食後のお茶も淹れたしフローズングレープも持った。ちょっと休憩してから、一気に仕事に取り掛かろう。
リビングの電気を消す
部屋を出る、廊下を通る
瞬間に、何億の声
現実を拒絶する、何億の声
身体がバラバラになりそうだ
19:52
本当に、いろんな時期がある。
半年か。
このままずっとひとりなのは、ちょっと嫌だな、と、初めて思うようになった。「奏くんと共にある」。そう思っているけれど、やっぱり、…寂しいよ。「ぽつん」としてるな、と、寂しくなる。
21:45
モニターに映るデザイン中の資料。突然、映像が交錯する。
お葬式前日の面会の時間。あの子の表情に放射する悲しみと戸惑いのエネルギー。あの青の祭壇に、棺、空気、新くんの涙に姿。
ちょっと待って。待って、今はだめ。
一気に引きずり込まれて、もう仕事とか手につかない。
今日はなんで、こんなに。
3月11日だからかもしれない。
2万人を超える人々が命を落としたこの日。その喪失への悲嘆が溢れているからかもしれない。
ニュースやSNSは観れない。溢れているだろう悲しみや哀悼。これ以上を受け止める余地がないのだ。
明日は外出の日。そんなにたくさん、泣いてはいけないよ。
見上げた天井に、今と昔が交錯する。そのまま混じってしまえばいいのに。今日は、あなたの不在がどうしようもなくひたすらに、重い。
助けて。
って、ぎゅうっと強く、両腕に跡が残るほどの力で自分を抱きしめて、はっきりと、でも声には出さずに、そう叫んだ。
助けて。
iPhoneが音を出した。
茉奈からLineだ。
…奏くんに届いたのかもしれない。
24:23
あと一ヶ月くらいで、奏くんの誕生日だ。
あの日は、もう一年も前なのか。彼の誕生日なのに、贈り物をもらったのは私だった。
自宅カウンターの右隣に座った彼は、私を真剣に見つめて、熱を持って語り始めた。どれだけいい女と思っているか、どれだけすごいと思っているか、どれだけ尊敬しているか。太陽の光のような真っ直ぐな言葉は、心の隅々まで暖かくした。照れちゃったけど。
あの贈り物は、今も、これからどんなことがあっても、心を暖め続けるよ。
あなたの世界は、極めてシンプルだった。私と、スナフィと、家と、熱中の対象。ただそれだけがあれば、十分に幸せで満足していた。ずっと、側にいてくれて、私を支え、背中を押し、愛してくれた。きっと、どこにいても、今だって変わらずに。
この10年の愛で、一生、走っていけそうな気がするよ。