18:23
「救急車の音はいやね」
義母が振り返る。優しい声で。
身体に電気が走った。この気持ちを共有している人がいる。
彼女のことを、心を込めて大事にしていきたい。改めてそう思った。
20:22
仕事を終えて、キッチンに向かう。疲労困憊に空腹で、しかも寒い。一週間ぶりの家は、寂しさや苦しさで重たい。気軽に帰れる実家でもあったらいいのに。
「春が来るまでは」
マントラのように、またそう呟く。「来るまでは」に続く言葉は分からないけれど。
たぶん、私は今、泣きたい。
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後悔が束になって襲ってくることがある。
もっと気をつけていれば。もっと本気で動いていれば。もっと、もっと、もっと。「間接的な死因は高血圧」だなんて、高血圧なんて今は薬で治るし、治療満足度だって高い。それを私は知ってるじゃん。
後悔の束に、押し潰されそうになる。
この家にいては苦しいだけなのだ。
「零がいて、スナフィがいて、この家があって。満たされている。他には何もいらない。」
彼の声がする。
今はまだ、先を考えるには早すぎる。考えるだけで頭がおかしくなりそうだ。
でも、ずっとここで苦しんでいるわけにはいかないんだ。
21:56
底の方へ
底の方へと、沈んでいく日がある
息が苦しい
もう動けない
助けてほしい
小さなことが、静か静かに苦しめて
落ちていく、深い深いところへと
あなたしか救えないのに
どこにいるの
なんでなの
繭かもしれない
祈りの塔かもしれない
ただもう一度、会いたい
息が苦しい
自分で上がっていく以外には無い
もう動けない
自分で上がっていく以外には無い
助けてほしい
自分で上がっていく以外には無い
会いたい
話したい
触れたい
声が聞きたい
側にいてほしい
抱きしめてほしい
こんなにも深い
自分で上がっていく以外には無い