19:02
「バイバイ」と笑顔で梨衣ちゃんを見送ってドアを閉める。途端に、この家は静かになる。
誰かが帰った後に来る孤独感は、次の瞬間には奏くんの不在へと向かう。寂しさに悲しさに、恋しさに打ちのめされる。
誰かが遊びに来てくれるのはとても嬉しい。でも、その分、ひとりでいることの何倍にも孤独感が増すのだったら、ずっとひとりでいたほうがいいなんて思ってしまう。
圧倒的な、静けさ。
ひとりでこの家に暮らしていることには、さすがに慣れた。
でも、彼がもうどこにもいないということが、未だに噛み合わない。
20:06
いつか近い未来に、
いや、今日か、明日か、に、
現れるかもしれない。
彼の死について、私を責める人が。
今日かもしれない、明日かもしれない。頭の片隅に、それはいつも在る。
その人は言う。あなたのせいだと。あなたが、もっと健康に気を配っていれば。食生活に真剣に取り組んでいれば。健康診断を受けさせていれば。高血圧なんて生活習慣病で、…知ってるでしょう?「患者の薬への満足度と薬の貢献度が最も高い病気のひとつである」ことを、あなた知ってるでしょう?
168日
24週
5ヶ月15日
になるんだって。今日で。
リビングのいつもの光景に、彼を見る。ドアを直していた姿。カレーを作りながら冷蔵庫を開ける姿。大きな背中を丸めてMacに向かう姿。そのどれもが、鮮やかさを失っていく。
1月も半分が過ぎた。
あと2週間で、ひとりで暮らして半年になる。
疲れやすい日々。仕事への気力が続かない。迫りくる月末、迫りくる締切。仕事したいのに、夕ご飯を食べたらもうぐったりだ。困ったな…。
どこか遠くへ行きたい。