8:41
夢を見ていた。
彼に送ったメッセージが既読にならない。心配で落ち着かない。
向こう側に座っている奏くんの姿に気がつく。「本当に良かったよ〜!」と、駆け寄って抱きつく。お腹の辺りにすりすりしながら、彼を見上げた。
「良くなって良かったよ〜。体は大丈夫?だって、窯にまで入ったんだよ!?」
「え?」とも「いや俺も」とも取れる、少し驚いた表情。いつの間に横にいた茉奈も「本当だよ。いや本当に良かった」と、笑顔でこちらを見つめている。
「窯にまで入って、…あれ?どのタイミングでどうなって『大丈夫』になってるんだっけ?」
整合性を取ろうとし始めたその途端、波が引いていくように、すっと目が覚めた。
薄目に映るいつもの寝室。
夢…。
もう一度目を閉じて、ゆっくりと息を吐いた。味わうように、夢路を辿る。
抱きつけて、良かった。
前回もそうだった。恋しくて堪らずに、その身体に触れたいと心で叫び続けた。涙の限りに泣いた。もうどうしようもない。泣き疲れて眠ったその夜だった。奏くんは夢に現れて、その恋い焦がれた身体に、抱きつくことができんだった。昨夜も、もうどうしようもないと泣きながら、淡い願いがよぎった。これだけ溺れんばかりに恋い焦がれていたら、夢で会えるかもしれないと。
夢で、せめて夢で、会えて良かった。たったひとことでも、声をかけられてよかった。あなたの声が聞けて、良かった。
脳のおかげか、はたまた彼の霊魂か。もうどちらでも、なんでも良い気がする。必要な時に、夢でこうして会えるだなんて、有り難い限りだ。ありがとう、私の脳。ありがとう、奏くん。そして、昨夜散々話を聞いてくれた茉奈、ありがとう。
夢でしか会えない。でも、本当に必要なときには、夢で会える。奇跡みたいだ。