18:36
「『切り替える』しかないんだよ!」
品川駅構内のNewDaysを出て人の流れに足を踏み入れる。途端に頭の中で聞こえた自分の声に、自分でびっくりした。
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2日間に渡るインタビューの連続は無事に終わった。
この規模の仕事を個人として任されたのは初めてのことだった。分厚い不安の雲に覆われ高い緊張感が常に付きまとい、頭も気持ちも心もフル稼動だった。
当初はこのプロジェクトに懐疑的だったというキーパーソンも、その終わりには「履歴書持ってきて」と二回も冗談を言ってくれたし、心からの安堵で全身から力が抜け、見送ってくれたクライアントさんの視界から消えただろう瞬間にしゃがみこんだ。
緊張感と不安が安堵とともに地面に落ち、立ち上がって歩き始めると、入れ替わりにものすごい嬉しさと達成感とで溢れんばかりになった。
途端に、はっとして、目の前の景色と自分が切り離されそうになった。
分かち合う相手が、
いない。
早く帰って奏くんに話したい、喜んでもらいたい、そして褒めてもらいたい。早く帰って…
でも、もう、いない。
歩道橋を歩くその足元が崩れ落ちるかと思った。
Josh や沙子も浮かんだ。ふたりに話せば、きっと喜んでくれるだろう。でも…。
体の中心、胃のあたりが、ぎゅーっと苦しくなる。絶望しそうだった。恵比寿の街は年末の賑わい。奏くんと出会った街の、出会った駅に、身体は向かっている。その先の、奏くんのいない家に向かって。
私はどこに帰るのだろう。あなたがHOMEだったのに。
足を踏み出す。なにもないような顔をして。
絶望の手前で、「いや、」と思う。
きっと、奏くんは、見ててくれている。
今日の一日を、私のがんばりを、喜んでくれたクライアントさんを。
きっと。
「ずいぶんと、切り替えが早いんだね」
そんな声が、乗り換えの途中で、内側から聞こえた気がした。
時が止まりそうになった次の瞬間に、その声はした。
「切り替えるしかないんだよ!」
それしか、ないんだ。それしか。
19:41
お父さんだ。お父さんにこの喜びと興奮を伝えよう。喜んでくれるし、分かち合える。お父さんがいて良かった。そう思って、泣きそうになった。車窓に映る自分を見る。
今、理想に近いところにいるかもしれない。
個人で信頼されて仕事を頂く。グラフィックデザインに、プロセスデザインとファシリテーションを組み合わせ、理想の未来の実現に向けて、人と組織の変容を伴走する。経済的にも安定したと言っていい。固定収入とは依然無縁の一般的な「安定」とは違うけれど、無理なく、自分に投資もしつつ、やっていけている。組織に属さず、私なりのペースで。
大企業からスタートアップとクライアントもいろいろ。友人と大好きなひとたちとゆえ、興味関心も自然に湧き、自然に全力が出る。心が入らないことはない。愛を持って、やれている。
ここまで辿ってきた、まっすぐでは決してない、今となっては「道」と言えるそこにあった全てが、今いきている。
たどり着いたのかもしれない。
お父さんと、分かち合おう。