昨日、信濃町(長野)に到着した。
山のなかにあるログハウスが紀亜の実家だ。起亜のお父さんが時間をかけてつくりあげて行ったこのお家で、紀亜やお母さんの優しくて温かい心配りに包まれている。
これほどまでに穏やかでいられのは、みんなの愛に包まれているからだ。抜けない緊張感を緩めてくれ、傷や痛みをじんわりと包んでくれる。
奏くんの思い出の詰まった妙高山を目の前に、温かい気持ちと涙とが同居する。
去年の今頃は、ここに一緒にいたのに。
紀亜一家とみんなで楽しく食べたごはん。日付が変わっても話し続けた夜のこと。
あれから一年。またぽろぽろと、涙がこぼれる。
でも。
目の前には、紀亜が作ってくれたフレンチトーストに、淹れてくれたコーヒーが湯気を立てる。大きな窓いっぱいに差し込む暖かな日差しのなかで。
オーディオブックを止める。ヒーターの音に、時折通る車の音。静けさのなかで、じーっと、ぼーっと、温かさと思い出と涙とを、すべて受けとめてみる。
最近はとにかく動くことで涙や悲しみに暮れることを避けていた気がした。
10:59
白銀の世界を滑る楽しみを教えてくれたのは奏くんだった。
妙高、栂池、斑尾、赤倉。一緒に行ったスキー場の数はどれほどになるだろう。
知らなかった真っ白な音のない世界。たくさんの楽しい思い出を、本当にありがとう。最高だったよ。
雪のない妙高山に、杉ノ原スキー場が見える。あれはいつかの連休だったっけ?リフト乗り場がひとで溢れかえっていて、あれには辟易したよね。向こうには、赤倉観光ホテル、通称赤観が見える。赤観には何度行ったかわからないよね。道挟んでの焼き肉がセットだったよね。
喉元が詰まる。
I love you so much. I miss you so bad.
だから、あなたに代わって、私が、私を愛していこうと思うよ。
11:51
野尻湖をスナフィと散歩する。
湖畔のベンチ。一緒にごはんを食べた席。奏くんが座ってたベンチにその姿を見ようとして、結果、辛くて泣いた。スナフィは元気に走り回って、それに救われた(翻弄された)。
隣接するナウマンゾウ博物館の駐車場に車を停める。紀亜の車がすでに停まっている。…身体が重い。疲れを感じて、そのまま車内日向ぼっこすることにした。暖かな陽射しにエネルギーチャージされて、12時のチャイムが背中を押した。
13:38
LAMPでランチ。
目の前には、向かい合わせて座る60代くらいのカップル。お互いがラップトップに向かって、それぞれに何かをやっている。
一緒に、歳を重ねていきたかったよ
こんなふうに
16:50
夕方の散歩は、午前と同じように野尻湖畔のキャンプ場へ。
泣いた、すごい泣いた。立ち尽くして泣いた。
起亜の車が視界に入り、近くに来て停まった。泣き止めなくて、そのまま泣き続けた。紀亜はしばらくただ側にいてくれた。
信濃町に来てから、結構辛い。よく泣いている。
奏くんの思い出の多いこの地。感情が強く揺さぶられ、不安定になっている。どうしよう。ここで過ごす明日、明後日。不安だ。
でも、悪いことじゃないかもしれない。
ここ最近は、ずっと動いていた。仕事も、家のことも、休む間も無く、ただずっと動いていた。泣き崩れることも、あまりなかった。
しかし、ここにいると、どうしても知らない人々との交流がある。正直、とても疲れる。セーブしたほうが良い。
ゆっくりお茶するものを買って帰ろう。
自分をほっとさせてあげよう。