18:27
奏くん。池神さんの長男くんが、ドローン教わりたいって。だから私が、ドローン家庭教師をすることになったよ。Tiny Whoop にも興味を示しているけど、私には教えられない。奏くんだったら、もっともっと教えられることあったのに。きっと仕事にもなったのに。
仕事になるチャンスは、いろいろあったよね。奏くんを責めるのではなく、私がもっと、周りに種を撒いていたら良かったんだ。Should have, could have, would have. ああしてれば、こうしてれば。そんなことを言ったって、もう、仕方がないよね。
優しい笑顔で車に向かう池神一家をスナフィと見送る。河井さんがキレイに草を刈ってくれた庭に立って。気持ちがざわめく。でも、これにも少し慣れてきたかもしれない。
食卓には、肉じゃが、きんぴら、卵焼き、それにマカロニサラダの計4品が並んだ。河井さんが作ってきてくれたのだ。「孤独でたまらなくなったら、うちで一緒に暮らしたら良い」とまで言ってくれ、有り難さで泣けてきてしまう。
奏くん。奏くんがいなくなって、本当に最悪だよ。でもね、信じられないほどに家族や友人たちが助けてくれる…。また号泣しちゃってるけど、有り難くて、幸せで、そういう涙なんだ。
あなたがいてくれたら、それに越したことはない。何を引き換えしにてでも、戻ってきてほしい、やり直したい。
でも、それがもう決して叶わないこと、もう認めざるをえない。毎朝、毎日、毎秒、突きつけられているのだから。
あなたが愛してくれた私は、あなたを内に抱いて、私の人生を生きていく。
ずっとずっと、ずっと、あなたは私の内で生きていくから。
21:54
奏くん、さみしいよ、さみしいよ、さみしいよ。
夜、左隣のベッドで寝ているあなたに手を伸ばすと、いつだってその手を握り返してくれた。
手が、腕が、皮膚が、空(くう)を切る
いつか、こんな風に崩れ落ちたり、しなくなるのだろうか
喉が少し痛い。風邪は引きたくない。もうこれ以上、弱い気持ちになんてなりたくない。
風邪の時に作ってくれたお粥。いつだって優しく、側にいて、支えてくれていた。
これ以上、弱くなることが、怖くなる。改源が効きますように。