26:37
法要の開始時刻は14時。お茶漬けで朝食にし、スナフィの散歩に1時間歩く。喪服に着替え持ち物を確認して、隆の運転で11時過ぎに出発した。
霊園には13時15分頃到着する。遺骨、位牌、遺影、それにビールを持って控え室に入ると、ご両親と担当者さんが既に談笑していた。
.
御本堂で四十九日法要を執り行った後、室内納骨堂にある参拝室に移動し納骨を行う。ご両親と私、それに隆のみの最少人数だ。
奏くんの名前、命日、年齢が書かれた大きな白い骨壷が、引き出しのようなお厨子に納められていく。
空だったお厨子に、白い骨壷がひとつ。
横に立つ奏くんのご両親を、見るでもなく、感じていた。
.
あれはいつだったろうか。
奏くんの実家で夕食を共にした夜。食後のコーヒーが入りデザートを食べながら、「お墓を買ったのよ」と、ニコニコ顔のお義母さんが奏くんに資料を見せた。
義母の生まれ育った目黒にあるその都会型の室内納骨堂は、カードキーを使って入室する自動搬送型で、近年人気なのだと言う。
「お友達がそこでお墓を買ったのよ。私たちも話だけ聞きにって行ったら、とんとん拍子で決まっちゃって。もう戒名までもう付けちゃったのよ。何だったかしらね?パパ」
笑いながら義母がアームチェアでテレビを観ている義父に言った。
お墓の掃除や管理の手間がかからず、無縁仏となっても永代供養してくれる。それでいて、お厨子には最大8名分の遺骨が収容できる。私たちふたりに迷惑はかけない、という、ご両親の一貫した姿勢をここでも感じた。
「カードキー!」「自動搬送型!?」好奇心丸出しで聞く私の横で、奏くんはあまり興味なさげに「へー」とか「ふーん」とか相槌を打ちながらケーキを口に運んでいた。
.
奏くんの遺骨が入った骨壷は、その現代的なお墓に納まった。
何だかよく分からない。促されて、喪主である私が最初にお焼香をし手を合わせる。ご両親がそれに続いた。ふたりが手を合わせるその後ろ姿に、何を思って良いのか分からなかった。