11:36
10時間寝た。
あの日以来、初めてかもしれない。喉にあった違和感も無くなっている。良かった。今は絶対に風邪を引けない。
スナフィの散歩から戻ると、沙子一家から、無印のカレーやお菓子の詰め合わせが届いた。
秋晴れに、気持ちの良い風が吹いている。
パラソルを出して、外でブランチにしよう。
頂いた野菜カレーと、梨衣ちゃんの手作りピクルスに、昨夜の空芯菜の炒め物と炭酸水。
隣では、スナフィが日向ぼっこをしている。
…幸せだな。
この状況だからこその、幸せのコントラスト。いろんな人の愛や想いで生かされている。奏くんが生きていて、私に「大丈夫か?」と、聞いてくれる。側にはスナフィがいる。
午後12時のチャイムが鳴る。
奏くんに会える午後が来た。
面会
とうとう、念願だったお水が解禁になった。
誤って気管に入ることを避けるためにトロミをつけて、「吸いのみ」で少しずつ。昨日「ミネラルウォーターの曲」すら聴きたがっていた奏くん。本当に良かった!
嬉しいニュースは続く。昨日まで、食事は鼻から入れる栄養のみだったのに、夕食にキャラメル味のゼリーが出る。飲み込むのが辛そうだったり、痰が出たりしつつも、完食。感動。
食後には、この日イチ、意識の明瞭さを見せる。ゼリーを食べたことで、食道から胃、腸、繋ぐ管などの内臓が動き、体を目覚めさせているのかもしれない。「体が動くようになるにしたがって覚醒度が増して行く」と先生が言っていたことを思い出す。
痰もだいぶ出せるようになった。声も出るようになってきた。まだまだ囁き声で、言葉として聞き取れないことも多いけれども。
「帰るね」と言うと、今日はすっと理解を見せた。「ここどこ?」に「日赤病院」。「今日は何日?」に、3回4回目で「19日」と、答えられるようにもなった。
「セルフィー撮る?」って言ったら、「俺はいい」、と断られた。流れで昨日の写真を見せるシーンがあったから、それでかな。でも、何か考えがあるんだろう。「考える」ことができている。これまでには無かったもの、と、ポジティブに捉えている。
23:15
奏くんのメンタルが気になり始めている。
奏くんが置かれている状況を認識し始めている。明日からのリハビリで、体が動くようになるにつれて意識ももっと目覚めていくだろう。不安や苦しさを外には出さない奏くん。どうしたらそんな奏くんを支えられるだろう。
ここまでシンプルな日々は、いつぶりだろう。
奏くんを中心に据えて、ほぼ奏くんのことだけを考えて、奏くんに会うのを楽しみに、毎日を生きている。「今日」と「明日」のことだけを見て。
あと3日で、出会って10年の記念日だ。8月23日。明日の様子を見て、どうするかを考えよう。
明日のもう少し先のことも、見えてきたかもしれない。