17:28
あと2分で面会時間だ。
呼吸が浅くなっているのを感じる
薄い緊張の膜が張っている
奏くんの状態は、どうなのだろう
1日が経過して、何か変わっただろうか
何も悪くなっていませんように
熱が少しでも、下がっていますように
20:33
ヤマトの営業所で、荷物をピックアップしなきゃいけない。
斜め向かいにある市立病院がどうしたって、視界に入る。
たった数日前の刻まれるような後悔。もっと早くに、ここに連れてきてあげられていたら。
逃げるように駅に向かう。
ロータリーに停めた車内で、茉奈の到着を待っている。
ベッドから目をそらすと、窓際には外された拘束具があった。
胴体と足は、熱中症の時に使うらしい電源付きアイスノンみたいなものが覆っていて、そのせいで手足が冷たいのだと言う。
手が、本当に冷たくて、奏くんの手が冷たいということに慣れていない私は、心底戸惑っていた。
頭部は、相変わらず熱いまま。
土気色をした顔。
目がうっすら開いている。
その姿が、胸を突いた。
なにをとらえているのか、なにもとらえていないようなその目は、少し濁っているように見えて、寝てる時の半目とはやっぱりちょっと違った。
看護師さんが手で目を閉じてくれて、その動作に、また苦しくなった。
非常に、辛い時間だった。
くらっとして、少し気が遠くなった時間もあった。
この続く高熱の正体が、わかってきていた。
全身麻酔に対しての反応で、悪性なんとか、という。
病院の駐車場に停めた車内で、奏くんのご両親に、今日の奏くんの様子を電話で報告する。
ずいぶん、取り乱してしまった。
青の「倒れたばかりだから、時間かかるさ」の言葉に少し落ち着いて、下道で1時間の道のりを運転して帰ってこれた。
しかし涙腺がやばかった。…よく帰ってこれた。
この日々が続くと、私、本当にやばいかもしれない。
でも、
お父さんが言ったみたいに、一番戦っているのは奏くんなんだ。
その証拠の高熱なんだ。
私がダメになるとかもう、言語道断だ。