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となりで話を聞いてくれる隆に、泣きながら喋り続けた。ただひたすらに、後悔している、ということを。翌朝は、私史上最も目が腫れていた。
一緒にいた10年の日々に、自分が、奏くんを死に追い込んでいったんじゃないか。死別からの1年で、その思いは強くなっていた。
あれは49日の頃だろうか。コーチとのセッションで確かに「後悔」を吐き出した。入院中や亡くなったその日のこと、あまりに鮮烈で、まだ身体はそのショックを感じ続けている、近視眼的なものがほとんどだった。それでも、そこで吐き出していたことで、日の目に出ずに腐っていくような事態が避けられて助かった。
死別から1年、後悔の対象は一緒にいた10年の日々へと拡大し、彼の死は自らの言動の結果である、そのように思うに至っていた。
後悔しても何にもならないこと、誰もhappyにならないこと、そんなことは分かっている。分かっているからこそ、それとは別のアプローチ、どうしたら二度とそれが起こらないよう自らが変われれるか、へと自分を向かせてきた。
それでも、「後悔」とその念のようなものは、自分の内に溜まっていき、自分が溺れそうになっていた。
この日、ただ聞いてくれる、ただ受け止めてくれる隆をとなりに、丸1年の間に積み上げた10年分の後悔を、外に出すことが出来た。どれだけ有り難いことだろう。
そして、それはようやく声になった。
「奏くんに会いたい」
この1年、内に渦巻くそれを、どれほど日記に書き出しただろう。
けれども、声に出すことは決して出来なかった。その寂しい響きに、ある種の絶望へと飲み込まれてしまいそうで。
でも、言えた。
言って、号泣した。
でも、言えた。
隆は、となりに座ったまま、やはり何も言わなかった。
後悔もその念もだいぶ出て、目元腫れ上がり涙枯れてきた頃、ようやくとなりから声がした。
「悪くないよ」
言葉にすると軽くなるから言いたくなかったけど、と前置きをしてから、隆はそう言った。そしてもう一度。
「全然悪くないよ」